会社辞めてフリーランスになる時に覚えておきたい8つの手順

 私は、先月12月一杯で会社を辞めて、晴れて今月からフリーランスとして個人事業主になった。
 その際、色々と手続きしたことや、各種書類の説明などをまとめておこうと思った次第。今後、私が事業主として誰かを雇った時のための手続きの備忘録になればいいかと。なお、もしこれからサラリーマン辞めてフリーランスになろうとしている方であれば、その一助になれれば幸いでもある。

1. 退職時に会社から渡されるもの

 会社に退職申請が受理されると、一般的に下記のものが渡されるはずだ。

 では、それぞれの書類について簡単に説明していこう。

年金手帳

 一般的に、会社を辞めると厚生年金から国民年金に切り替えが必要となる。サラリーマン時代であれば、会社が給料から天引きする形で年金(厚生年金)を自動で払ってくれていたのだが、フリーになると自分で国民年金を払っていくことになる。そのため、年金手帳が必要になるのだ。だいたい、会社に就職した時に会社へ預けているケースが多いので、退職のタイミングで返却される。会社によっては社員の自己管理になっている場合もあるので、その際は手元に年金手帳があるかどうか確認しておく必要がある。

雇用保険被保険者証

 ハローワークで雇用保険の失業手当を受給する際に必要になる書類。だいたい、年金手帳と一緒に会社側が預かっているケースが多いので、退職時に会社から渡される。もし、退職後に転職したりすると、新しい会社で提出を求められることになるので、手元にある時は大切に保管しておく必要がある。
 会社によっては自己管理になっている場合があるので、その際は手元にこの書類があるか確認しておく必要がある。

社会保険資格喪失証明書

 会社を辞めてフリーになると、国民年金や国民健康保険への社会保険資格を切り替える必要が出て来る。そのための手続きに必要になるのが、この書類だ。基本的にこの書類は希望しないともらえないものなので、退職時にはこの書類が必要ということを会社の事務担当者へ伝えて、発行してもらう必要がある。
 退職後でも発行してもらえるので、もし持っていなかったら元の会社へ連絡して発行してもらうと良い。

離職票

 正式名称は「雇用保険離職証明書」。ハローワークで雇用保険の失業手当を受給する際に必要になる書類。一般的に退職後10日前後で会社から発行されるが、希望しないともらえないので、退職時にはこの書類が必要であると伝えておこう。もし失業手当の受給を考えている場合、申請してから受給開始までのインターバルが3ヶ月超もかかるので、この書類を速やかに取得して、なるべく早く申請を行いたいところである。
 なお、私のように当面失業手当の受給を考慮していない場合は、とりあえず取得しなくても問題ないが、必要になった際に後から申請する手間を考えると退職のタイミングで発行してもらっておくのがベストである。

最終給与明細

 最終給与とは、退職月(私の場合2015年12月)の翌月に支給される(私の場合、2016年1月支給分)給与のことになる。基本給は当月支給になっているため、基本的に残業などの時間外手当のみが支給されることになる。もし、退職月が全て有給消化などで時間外手当などが発生しなかった場合、退職月の給与がそのまま最終給与になる。
 なお、私の会社では健康保険料と厚生年金保険料は1ヶ月遅れで控除(天引き)されているため、最終給与で2ヶ月分が控除される仕組みであった。もし最終給与で控除後の支給額がマイナスとなった場合、会社へマイナス分を払わなければならない。
 私の場合、2ヶ月分控除を退職月の給与で清算してもらったので、最終給与でマイナスが発生することがないハズだ(この記事を書いている時点で、まだ最終給与が確定していないので)。この辺の清算タイミング等は融通してくれる可能性があるので、退職時に会社の事務担当者へ相談してみると良い。
 会社辞めた後に会社にお金支払うってのは何か気分が良い感じがしないので…(笑)

源泉徴収票

 最終給与確定後に発行される帳票で、自分の年間所得額や納税額、支払保険料の総額などが記載されている書類だ。転職や確定申告の際に必要になるので、取得したら大切に保管しておく必要がある。基本的に何度でも発行可能なので、必要に応じて元の会社へ連絡すれば発行してもらえるが、一度辞めた会社に手間をかけさせるのも心苦しいので、ここで取得したら上手く使い回そう。
 例えば、確定申告など役所へ提出する書類に添付が必要になる場合があるが、その場合、源泉徴収票のコピーを添付し、申請時に原本を提示して、複写と記載内容が一致していることを確認してもらえれば、原本を手元に残しておけるのだ。

2. 会社へ返却するもの

 一般的に、退職時に会社に返却しなければならないものは下記の通りだ。

健康保険証

 退職日の後に、なるべく早く返却する必要がある。会社によるが、たいていは健康保険組合へ郵送で直接返却することになる。会社への返却だったり、返信用の封筒をもらえる場合もあったりするので、事務担当者に返却方法は確認しておくこと。
 なお、後述する健康保険の任意継続を行う場合は、取り扱いが特殊になるので注意が必要。

入館証・社員証

 オフィスへの入館証や社員証といったものは、最終出社日に事務担当者などへ返却すれば良い。もし担当者がいなかった場合、部門長に返却しておけば問題ない。返却先の相手が誰もいなかったら、同僚などに預けて返却を依頼しても構わないと思われる。

名刺

 名刺は個人情報や機密情報に関わる書類と同一という扱いなので、返却するか、シュレッダーで破棄すること。取引先などの顧客名刺も同様である。基本的に、自分の名刺はシュレッダーで破棄し、取引先などの顧客名刺の取り扱いは上司に預けてしまうのが一番手っ取り早い。上司によって名刺の取り扱いは異なるが、たいていは継続している取引先の名刺は後任へ引き継ぎ、それ以外は破棄するように指示されると思う。わからなければ、総務などの事務担当者へ相談してしても構わない。

会社より貸与されたもの

 業務用PCやノートPC、携帯電話などの機器は基本担当部署などに返却するだけで問題ない。たいていは情報システム部門等でデータのフォーマットをして、再利用してくれるハズだ。まぁ、心情的に出来る限り不要なデータを削除して…とか思う人も多いかもしれないが、基本、辞めた人のPCの中身なんて調べたりしないので、そんなところに労力を割くのは無駄である。
 ただし、もしあなたがエンジニアとして就業していたのであれば、ブラウザのキャッシュと履歴、記憶したパスワードなどは消しておくのがマナーだ。これらが残っていると内部システムへのセキュリティホールに繋がってしまう可能性があるからだ。
 また、私がそうだったのだが、PCにインストールしたパッケージ版アプリケーション(例えば Adobe CSシリーズ(非クラウド版)やモリサワフォント等)などはアクティベーションを解除してアンインストールしておくのが地味に重要だ。後に別マシンにパッケージインストールしようとしたら、ライセンスが登録されたままになっていて、使えなくなってしまった…というケースはよくあるので。
 あまりPCに詳しくない場合は、自分のPCにインストールされているアプリケーションの一覧を書き出して、社内の情報システム部門に相談してみるのが良いだろう。

デスクの鍵・備品

 自分のデスク周りの文房具や備品、袖机の鍵などは社内に管理している部門なり人なりがいるはずなので、そこへ返却することになる。基本的に最終出社日に物品返却行脚をすればOKだ。

勤務報告書・タイムカード

 これらも会社によってまちまちだが、基本的にタイムカードは最終出社日に退勤打刻を行った後に、事務担当者や人事へ返却すれば問題ないだろう。勤務報告書などは、最終出社日のある月だけは末日まで勤務実績を登録しておく必要がある。もし、最終出社日後はすべて有給消化だったとしても、その旨で末日まで登録して書類として「〆(しめ)」ておけば問題はないハズだ。また書類であれば、最終出社日の勤務終了後に上司へ提出しておけば良いだろう。
 この勤務報告関連の仕組みは会社によって運用ケースが大きく異なるので、退職にあたっての運用の仕方を事務担当者や人事などに相談してしまうのが一番良い。

3. 社会保険(健康保険)の扶養の切り替え

 私の場合、会社の社会保険に息子二人が扶養として入っていたのだが、この状態は退職後に国民健康保険に切り替わると息子二人が扶養から外れてしまう。なぜなら、国民健康保険には「扶養」という概念がないからだ。一般的にはその時点で世帯主として私が国民健康保険に加入し、息子二人の保険料も一緒に払うということになる。
 しかし、私の世帯は、妻が会社員であるため、妻側の社会保険で息子二人を扶養するという被扶養者の異動を行うことが可能だ。さらに、私も国民健康保険には切り替えずに、今までの社会保険を任意継続することにした。社会保険の任意継続については別項で説明する。
 さて、社会保険の被扶養者の切り替えのやり方だが、基本的に新たに扶養者となる被保険者側(私の例では妻)の会社で「健康保険被扶養者(異動)届」をもらい、社会保険組合に必要書類を添付して提出することで行われる。
 
 その必要書類の中には異動前の被保険者(つまり私)と異動後の被保険者(妻)の所得差が確認できるものが必要になる。つまり、私のように新たに事業主となる場合、私の事業の収支がわかる「事業計画書」的な書類の提出が必要だ。しかも、年間収支つまり年間所得額が妻より少なくないと扶養の切り替えができない。社会保険では、世帯中での扶養はもっとも所得が多い被保険者にしか行えないという決まりがあるからだ。まぁ、私のように未創業状態で年間収支予測の確度も確かでない場合、妻の年収より所得が少なくなるように収支計画を調整して添付してあげれば問題なく承認される。

4. 社会保険の任意継続

 一般的に、会社を退職してフリーになったら、健康保険は社会保険から国民健康保険に切り替えなければならない…と認識している人が大多数だと思う。しかし、社会保険は退職後、最長2年間だけは任意継続できるのだ。これによって、社会保険最大の恩恵である扶養控除等も継続が可能になる(これについての詳細は前項を参照)。

 よく云われるが、国民健康保険は保険料が高い。保険料は前年度の収入額に応じて算定されるため、とくに私のようにサラリーマンからフリーランスに転じた場合等、ある程度の収入実績があった状態から0ベースでの収入構造に変わった時の初年度などは保険料の負担額がかなりの重荷になることもありえるのだ。
 実際に私が国民健康保険に加入した場合の来年度平成27年度の保険料を試算してみて、社会保険を任意継続した場合の保険料と比較してみた(社会保険の保険料は保険組合に電話して、記号番号を伝えれば教えてくれる)。

健康保険 年間保険料 月間保険料
国民健康保険 637,339円 53,111円
社会保険(任意継続) 549,120円 45,760円
差分 88,212円 7,351円

国民健康保険計算機
http://www.kokuho-keisan.com/

 上記の表でも明らかだが、社会保険を任意継続した方がメリットが大きい。任意継続期間の最大である2年間を国民健康保険ではなく社会保険で継続しただけでも、10万円以上のコスト削減が見込めるのだ。これはフリーランス一年目で何かと初期出費が多い時期にとって非常にありがたいことである。

 では、社会保険の任意継続のやり方だが、これは会社を通さずに健康保険組合と直接やり取りをすることになる。まずは、組合に連絡して任意継続用の申請書を送ってもらい、それを提出すればOKだ。注意点としては、任意継続の手続きは退職後20日以内に行わなければならないことだ。もし、任意継続の意思がある場合、退職日を過ぎたら真っ先に手続きを行った方が無難である。

 ちなみに、任意継続の申請が受理されると「任意継続保険証」が新たに発行されて手元に届く。その任意継続保険証が手元に届くまでの間は旧保険証が利用可能であることも覚えておくと良い。実際、私も新しい保険証が届く前に風邪ひいて通院したが、医療費や処方薬料の清算時には旧保険証が使えたので。その後、新しい「任意継続保険証」が届いたら、旧保険証(被扶養者保険証も含む)は健康保険組合に郵送で返却することになる。

5. 国民年金への加入

 健康保険は社会保険の任意継続が行えるが、一方、年金については退職に伴って国民年金へ切り替えが必須となる。とくに退職後にフリーランスなどの自営業となる場合は、「国民年金第1号の資格取得の手続き」にて国民年金への加入が義務付けられている。
 手続きは、最寄りの役所や出張所(市/区民事務所)、町役場などで簡単に行える。手続きの際には「社会保険資格喪失証明書」か「離職票」が必要になるので、持参すること(役所で証票としてコピーして原本は返してくれる)。また基礎年金番号も必要になるので「年金手帳」も持っていけば万全である。

6. 住民税関連

 サラリーマン時代に給与から自動控除(天引き)されていた科目に「住民税」がある。この住民税もフリーになると自分で支払うことになる。もし、フリーではなく転職の場合で、退職の時点で次の勤務先が決まっているのであれば、引き続き新たな勤務先での給与控除を継続できる「特別徴収継続」ができることもあるので、会社に相談してみるといい。
 退職後にフリーになる場合は、前述の「特別徴収継続」はできなくなるので、普通徴収への切り替えが行われる。切り替わると自宅に住民税納付書が届くようになるので、その後はその納付書で支払っていくことになる。
 なお、退職時には希望すれば退職年に支払うはずの未納分住民税を一括徴収してもらうことも可能である。これをやっておくと、退職した年に限って、住民税を支払うことはなくなるので、退職して収入が途絶えてしまったとしても、住民税の未払いが発生するリスクを軽減できるのである。

7. 開業届の提出

 会社を退職しただけの状態は「無職」である。だが、開業届を提出することで「個人事業主=自営業」となる…と云えなくもない。制度上、開業届の提出には義務はあるものの、提出しなくても事業はできるうえに罰則もないので、開業届など出さずに事業やっている方は多い。まぁ、このあたりは気持ち的な「けじめ」や「メリハリ」といったものに近くて、自分なりの覚悟みたいなものでもある。
 私は「開業届」を出しているという事実が、「何となくフリーでやっている」というもやっとした意識ではなく「自分は事業をやっている」という責任感的なものが生まれている感じがして気持ちが良い。堂々と「私は個人事業主、経営者なのだ」と言い切れるしね。

 開業届の提出の仕方は、税務署で入手できる「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけだ。個人事業主になって事業をやるのであれば、青色申告による税制特典を受けた方がいいので、同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておけば間違いないだろう。ともに、とくに迷うような記入欄がないので、その場で書いて提出してしまっても良いが、提出時には控えをもらえないので、書いたらコンビニでコピーを取ってから原本を提出するのがベストだ(税務署にはコピー機がないので)。

 また、届出にあたっては個人番号(マイナンバー)の記入と、マイナンバーカード(もしくは通知カード)の提示が求められるので、マイナンバーカードと印鑑を持って行かないと二度手間になるので注意が必要だ(私はマイナンバー通知カード持っていくの忘れたが、今は過渡期だから…ということで大目にみてもらった)。

8. 会計ソフトの導入

 さあ、これで退職してフリーランスになるための事務手続きはほぼ完了なのだが、開業して青色申告での税制特典を受けようと考えているなら、早速会計ソフトを導入して現時点での事業初期資産を整理しておくと後々手間がなくて良い。今どきの会計ソフトはどれも使いやすく、初心者でも取引の仕訳がしやすく作られている。どの会計ソフトを選んでもそこまで大差ないと思うが、環境やデバイスを選ばず、ネット環境があれば利用できるという利便性からクラウド型のソフトを選んでおくのをオススメする。

 私は、個人的に以前から気になっていた「freee」を導入したが、スマホで利用している家計簿アプリ「MoneyForward」の系列でもある「MFクラウド会計」も評判がイイ。
 両者を簡単に比較してみた。
 

項目 freee MFクラウド会計
無料試用期間 1ヶ月 45日
料金 980円/月(個人事業主プラン) 1,980円/月(ライトプラン)
その他 法人登記手続きも可能

 家計簿アプリ「MoneyForward」を使い慣れている人なら、MFクラウド会計とは親和性が高いだろう。データ連携もできるようだし。ただ、私的には特に機能差を感じなかったので、純粋に利用料金の差でfreeeに軍配が上がった感じだ。
 実際、ここ数日使っていて特に不満もなく、便利に使えているので、満足している。

 今回実際に色々とやってみて、何気に退職後の手続きは面倒であることがわかった。15年前に転職した時はここまで面倒な手続きはなかった記憶があるので、やはり転職と独立起業は違うということだろう。あと、扶養する家族が増えるとそれだけ必要な手続きが増えるという事も覚えておく必要がある。まぁ、一度やれば就業形態を変えない限りやる必要のないことではあるが、起業に際してはこういう手続きが発生するということを知っているだけで独立のハードルが下がるのではないだろうか。

 また、この記事では特に明記しなかったが、私のように未就学児の子供がいる場合、もう一つ「保育園への対応」という大きな問題があることを覚えておかねばならない。認可保育園等の公立の保育所の場合、両親の就労証明が適正でないと「退園」となってしまうからだ。ただし、保育所側で重視する就労実績は就労時間であり、収支は関係ないので、退職後も例えば「8:30~17:30で(自宅で)勤務している」というような就労証明を市区町村に行うことで、継続的に保育を委託できる。
 基本的には、役所に行くと個人事業主やフリーランス用の自己申告型の就労証明書を入手できるので、それに「週何日、1日何時から何時まで」と「事業内容」を記入して提出すればOKである。

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